誰のためのUI? Dropboxのデザイナーが語るUXライティング

John Saito

JohnはDropboxでライティングのデザインなどを担当。前職はYouTubeとGoogle。

この記事はMediumからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Is this my interface or yours?

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Windowsに「My Computer」のアイコンがあった時代を覚えていますか? あなたのコンピュータ上にある、すべてのアプリケーション、ファイルやその他のデジタルコンテンツを詰め込んである、小さなアイコンのことです。

後のバージョンのWindowsでは、Microsoftはこのアイコン名を「Computer」へと変更、さらには「This PC」へと変更しました。その理由は何だったのでしょうか? 「my」が何を指すのか曖昧だからでしょうか? どこか矛盾しているからでしょうか? それとも必要なかったからなのでしょうか?

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このアイコン名の変更は、私に大きな疑問を抱かせました。なぜこのような製品は時として、「私のもの(my〜)」や「あなたのもの(your〜)」という言い方をするのでしょうか?

「あなたのもの」を何と呼ぶか?

様々なアプリを見ていくと、UI上であなたの所有かどうかを表す基準は存在しないことがわかります。「my」と謳ってるものあれば、「your」と謳っているものもあります。

YouTube and Google Drive call it “my” stuff. Spotify and Amazon call it “your” stuff.

YouTubeとGoogle Driveは「my」を使っていますが、SpotifyとAmazonは「your」を使っています。

もし、あなたがUIをデザインしているとして、これらの言葉がユーザー視点と製品視点のどちら側で使われているものなのかを重要視することはありますか? そこには微妙な違いがあり、ユーザーがその製品を使用しているときに、どのように感じて欲しいかによって変わってきます。

「My」の観点から見た場合

UIで「my」を使用することで、その製品がユーザーの拡張であること、ユーザーの一部として存在していることを意味しています。まるでその製品がユーザーの代わりに名前をつけられているようです。「My」という言葉は個人的な印象を受けますし、ユーザーがカスタマイズできて、コントロールができるように感じられます。

その観点から、プライベートなもの、個人的なもの、所有権を強調したいときに「my」を使うことの方がより適しています。それが「My Computer」が数年前までずっと採用され続けた理由といえるかもしれません。当時はコンピュータは常にほぼ一人の人しか使用しませんでした。人々は通常、ファイルを共有したりすることはなく、すべてのものは一つの小さなアイコンの中に安全に収められていたのです。

Mine. All mine.

全て私のもの!

「Your」の観点から見た場合

UI上で「your」という言葉を使うことで、製品はあなたと会話していることを表現しています。まるで製品がパーソナルアシスタントであるかのように「音楽はこちらですよ。注文はこちらからですよ」と、あなたの行動を補助してくれるのです。

そういった観点から、「your」は製品に対話感覚を持たせたいときに適しています。タスクを通じて、あなたに常に寄り添っているのです。支払いスケジュールの調整や、納税申告書の記入だろうと、多くの製品はそれらのタスクをより早く、スマートに、そしてより簡単にこなせるよう手助けをしています。

今日(こんにち)では、コンピューターとアプリケーションでさえ、パーソナルアシスタントとしての役割さえ担っています。SiriやAlexa、Cortanaなどのことです。彼らはメモを取るのを手伝ってくれたり、牛乳を買うのを思い出させたり、メールを読み上げてくれるのです。

Hey Siri, can you change my baby’s dirty diaper?

Mediumを含むいろんな種類のWebやアプリでは、あなたにオススメを紹介してくれます。 私が思うに、これもパーソナルアシスタントのようなものと考えますが、私が今日読むべきものをピックアップしてくれるのです。

このようなトレンドはもっと広がっていき、「my」ではなく「your」を使うアプリがどんどん増えて行くのではないかと私は思っています。

どちらの観点でもない場合

デザインの多くがそうであるように、すべてのシチュエーションにおいて効果的で、汎用的なソリューションというものは存在しません。

しかし、近年の多くの製品では、ユーザーに属するものに名前をつける場合に、「my」や 「your」のような言葉が省かれてしまっています。

No mention of “my” or “your” here.

「my」 も 「your」もどこにも見当たりません

そして、「my」という言葉を省くことは、Windowsが「My Computer」から「Computer」への変更を決めた時と、全く同じアプローチであると言えるかもしれません。

とはいえ、「my」や「your」を使用しないことが必ずしも良いとは限りません。ユーザー所有のものとそうでないものとを区別する必要がある場合があります。

例えば、YouTubeでは、ただ単に「Channel」とは言うことができません。というのも、あなたのチャンネルのことについて言っているのか、あなたが購読しているチャンネルなのか、YouTubeがあなたに勧めているチャンネルなのかがはっきりしないからです。

Just using “Channel” won’t work in this context.

この文脈ではただ「Channel」とあってもどのチャンネルのことを言っているのかがわかりません

それが、Windowsが最終的に「Computer」から「This PC」へと変更した理由なのかもしれません。そのままではあまりにも曖昧すぎますし、彼らは「このコンピュータ」のことを指しているということを明確に示す必要があったのです。

どう使い分ける?

ここまで、UIの要素が誰の所有であるかについてのお話をしてきました。ですがそれは、ユーザーとしてのあなたが遭遇する言葉のうち、ほんの一部のものでしかありません。例えばボタンの名称、説明文、設定画面などはどうでしょうか?

これに関しては幅広い意見がありますが、私は以下の様なガイドラインに沿って考えています。

「me」を使うとき

ユーザーがボタンをクリックしたり、チェックボックスを選択したり、製品とインタラクションをするとき、「I」「me」「my」もしくは「mine」を使います。しかし、これらの言葉を使うのはあくまでそれを明確にする必要がある場合に限ります。

「you」を使うとき

製品が質問したり、指示をしたり、ユーザーに何かを説明しているとき、「you」や「your」を使います。 パーソナルアシスタントだったらどう言うだろうか、ということを想像してみてください。

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UIが質問や説明をするときには「you」、自分が取る行動(チェックボックス、ボタン)に関しては「me」

「Our」を使うことの意味

最後に、世間では割と一般的な、もう一つの視点について言及しておかなくてはなりません。「our(私たち)」 の視点です。UIで、製品が 「we」「our」「us」を使用する場合です。

From Chase Bank’s homepage

Chase Bankのホームページより

「we」「our」「us」を使うことで、我々は実際に、製品の背後にいる第三者の人々を参加させています。心を持たない機械ではなく、そこには仕事をしているリアルな人間がいることを示唆しています。

もし、あなたの製品で、料理やデザインや掃除などのような、人間が行うサービスを売っているとしたら、「we」は人間味を与えてくれるものとなります。「私たちがお役にたてます」 「私たちのサービスについてはこちらをご覧ください」 すべてのウィンドウやボックスの裏に、リアルな人間がいることを知ることで、ユーザーは親近感を感じてくれるのです。

一方で、あなたの製品がGoogleの検索エンジンのような自動化ツールであれば、 「we」では誤解が生じるかもしれません。なぜなら、あなたの検索を処理する人間はいないからです。実際、GoogleのUIのガイドラインは、UIにおける多くのことで「we」を使用しないことを推奨しています。

まとめ

私がこのテーマについて書いた理由は、このような疑問がデザイナー、デベロッパー、ライターから繰り返し何度も出てきたからです。

我々はなぜここで「my」 を使うのか? なぜそこで「your」を使うのか? 疑問は多く浮かび上がるのにもかかわらず、それが文書化されているスタイルガイドをほとんど見たことがありません。あなたの会社には、UIの視点についてのガイドラインがありますか?


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