食材宅配サービスOisixにおけるUXの取り組みとアプリの改善事例

UX MILK編集部

モノづくりのヒントになるような記事をお届けします。

有機野菜などの食品宅配専門のECサービス「Oisix」を展開するオイシックス株式会社。同社ではサービスのUXを向上するため「UX室」というチームを設け、日々サービスの改善を行っています。

今回はオイシックスのUI/UXデザイナーである福山さんにオイシックスのUXデザインの取り組みと、実際の事例のお話をお伺いしました。

Oisixとは

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Oisix」は有機野菜や無添加食品などの定期宅配を行うECサービスで、Webとアプリ両方で展開しています。定期宅配と言っても、注文の最低金額設定もなく、注文をしない週があっても良いなど、自由でフレキシブルな買い物体験を提供しています。

オイシックスにおけるUXデザインの取り組み

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福山 遊果 氏
EC事業部 UX室 UIデザインセクション UI/UXデザイナー

千葉県千葉市出身。多摩美術大学情報デザイン学科を卒業し、ソフトウェア会社でのUI/UXデザインを経て2012年よりオイシックス株式会社勤務。WEB、アプリサービスのUIデザインを担当。オイシックスで好きな食材は「はちみつパイナップル」。11月より産休中。

オイシックスでUI/UXデザイナーをしている福山です。業務内容としては、既存サービスの機能改善、新サービスや新機能をつくるときに上流から関わってお客様にどういった体験をしていただくか、または導線設計や具体的なデザインをどうするかなどを提案する仕事をしています。

企画は別の担当がいるのですが、その人たちの問題提起や、サービス企画が決まったときに一緒に入っていき、目標や目的、ストーリーを一緒に考えていく感じになります。

お客様視点を浸透させた「UX室」

オイシックスはECというのもあり、数字周りが強いマーケターの人が多く、数字で考えることが多いのですが、そうすると売り手目線になってしまうことがあります。そういったときに「これが本当にお客様にとっていい体験なのか?」という警鐘を鳴らすのが私たちUX室の役目です。「お客様視点が一番ある人」という感じですね。

例えばオイシックスでは完了した注文をキャンセルできるのですが、受注を取るためにはキャンセルをしにくくするといった施策が案に出たことがあります。そのようなことをしていたら、お客様の体験としてはNGですし、オイシックスとしても後で絶対にいいことにはなりません。

ユーザーテストの参加人数がKPI

特にまだUXが社内に浸透していなかった頃は苦労したのですが、ユーザーテストをたくさん実施し、お客様に会う機会を増やしてアンケートもたくさん取って、「お客さまがこう言っているからこうしたほうがいい」というのをちゃんと資料として持っていって納得させるようなことをしていました。

また、社内にUXを認知させるため、ユーザーテストに社内の人を積極的に参加させる取り組みをしました。オイシックスには社員が200人ほどいるのですが、そのうちの100人はユーザーテストを見たことがある、ないしは参加しているような状態を作るために、その参加数をKPIにしたこともあります。

例えば、インタビューなどでお客様と話しているのを隣の会議室で映像を流して、社員が見られる状況を作るなどしています。お客様が買い物しているとき、どのようなことを考えているかをきちんと把握し、「皆で解決していこうよ」という空気づくりをしました。

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事例:Oisix定期注文アプリの改善

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ここからは実際の取組みのお話です。オイシックスの定期注文ができるアプリを2015年の3月にリリースしたのですが、そこで行った施策をご紹介します。

アプリリリース当初、Webサイトとアプリで売上の乖離が生じていました。具体的には-350円の平均売り上げ単価の差がありました。

アプリは当初限定されたユーザー様にのみ公開していたので、ロイヤリティの高いユーザー様が集まっているはずにも関わらず、単価が低いという状態でした。本来アプリ版はよりよいユーザー体験を提供すべく作ったものですが、この売上状況だとアプリを本リリースしたときに全体で売上のロスが出てしまい、本末転倒になってしまいますので、まずは目標をWebの売上を追い抜くというところに設定しました。

浮上した2つの仮説

ゴールが決まったらまずはデータを分析しました。何時くらいにお客さんが来ているか、どのコーナーがよく見られているかなど、今回は主にWebサイトとアプリを比べてデータを見ていきました。そうすると2つの仮説が浮上してきました。

仮説①:新しい商品と出会えていない

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Webの方では冷凍食品などの特集が売上のベースとなっていたのに対して、アプリでは特集や新商品の売上が悪いことが判明しました。どういうことか掘り下げていくと、アプリではカテゴリーからしか商品が買われていなかったんです。つまり、自分の知っている商品しか買うことができないようなアプリになってしまっていました。

仮説②:商品にいいタイミングで出会えていない

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データを分析するとお気に入りや、よく注文している商品、注文履歴から商品が買われていませんでした。また、潜在的に欲しいものや、その場で美味しそうと思えるものにも出会えておらず、いわゆるウィンドウショッピングのような楽しい買い物体験ができていない、という仮説が導かれました。

アプリ版は当初、注文をストレスなく処理できるようにサクサク感を重視してシンプルなものにとどめていたのですが、これらの仮説を基に、より楽しいお買い物ができるアプリへと変えていきました。

アプリの単価向上のための6つの施策

2つの仮説を基に様々な施策を打ちました。その中でも今回の目的の単価UPに貢献したものをご紹介します。まずは仮説①の「新しい商品と出会えていなさそう」という部分に関しては、以下の施策を行いました。

1.商品の訴求をしっかりする(+¥100)

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前述の通り、アプリではサクサク感を重視していたので訴求は特にしていなかったのですが、大きいシズル写真とキャッチコピーを入れて、この商品の美味しさをきちんと訴求することから始めました。

2.特集を回遊できるようにする(+¥50)

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特集の見せ方に関しては、今まではおすすめ画面のバナーとページを行ったり来たりしなければならなかったのを、各特集の一番下にネイティブバナーを見せて、特集間の移動を可能にして回遊できるようにしました。

3.今週の催事をお知らせする(+¥70)

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オイシックスでは毎週木曜日に商品が入れ替わるので、多くのユーザーがそこからお買い物を始めるのですが、そのときに今週のお得情報や、今週の催事をお客様の属性に合わせて見せるようにしました。例えばオイシックス内で入会しているサービスによって見せる特集を変えたり、受注額によって割引を見せたりなどしました。

これらの3つの施策によって、仮説①の「新しい商品との出会い」というものを提供しました。続く3つの施策では仮説②の「商品といいタイミングで出会う」というところを解決するために考えた施策です。

4.カテゴリーを自分ナイズ(+¥40)

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商品を並べるときに「よく買う商品」や「人気商品」を上位に表示するなどして、商品の陳列を工夫しました。いつも買う商品にはすぐに出会え、なおかつ人気な商品もわかるようになり、より選べる楽しさというものを演出しました。

5.カートの下に気を利かせる(+¥50)

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オイシックスでは冷凍手数料と配送料が別にあり、一定金額に達したら手数料や配送料が無料になります。これはカート画面の施策なのですが、冷凍手数料や配送料が無料になる額まで達していないお客様に対し、その方がよく買っているものや、とりあえず入れておけばいいやと思えるものをカート画面の下部でレコメンドしました。

6.よく買う商品を注文後に表示(+¥70)

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オイシックスの注文の配送期限は毎週木曜なのですが、それまでなら何度でも注文内容を変更できます。そのため、お買い忘れがないよう、よく買う商品を注文後に表示するようにしました。

・・・

すべてはご紹介しきれていないのですが、上記の施策などを実施した結果、Webとアプリの売上単価差を-350円から+80円に逆転することができました。もちろんここに紹介していない、全く効果のでなかった施策もたくさんあります。施策ごとに細かくデータを追いながらひたすら施策を打っていきました。

これらの施策は約3ヶ月という短い期間で行い、かなりスピード感をもって取り組みました。

データドリブンで進める、食生活のデザイン

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私はUI/UXデザイナーとして、人や生活の体験に関わるデザインをしたいと思っているのですが、オイシックスはまさにそれができますし、食生活に関わるデザインをしているというところにやりがいを感じています。事例でご紹介したように、施策に対してすぐに結果が数字として現れるので、お客様の体験を作っている実感がすごくあります。

私自身、前職ではUIデザインだけをしていましたが、それだけでは生き残れないですし、マーケティングを学びたいという気持ちもあってここに来ました。頼りになるマーケッターがいて、課題解決や数値分析、仮説出しなどを一緒に取り組んでもらえるので、すごくいい環境だと思います。

今後はようやくスタートラインに立てたアプリ版で、アプリ独自の体験とかを作っていくフェーズになります。例えばよりパーソナライズさせるというプロジェクトなども動いていて、よりお客様の好みにあった商品や食材を提案するようなものを考えていって、楽しいお買い物体験を作り出していきたいと思っています。

提供:オイシックス株式会社
企画制作:UX MILK編集部


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