『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(以下『ガルパ』)はかわいいキャラクターとオリジナルやカバー曲が多数登場する今人気の「音ゲー」アプリです。アプリのセールスランキング上位にも食い込むほど熱量の高いファンと向き合うために、同社のデザインチームでは普段どういったことを考え、デザインをしているのでしょうか?
今回は『ガルパ』の開発を手がけるCraft Eggさんのデザイナー3人に、ゲームアプリのデザイン現場について話を聞きました。
ユーザーに負けないコンテンツ愛が必要なデザイン現場
―『ガルパ』はUX MILKで取り上げる中でも異色の「キャラゲー」です。かわいい女の子がたくさん出てきますが、皆さんはそれぞれ推しの女の子がいますか?
井口:ひいきになってしまうので、全員推しということでお願いします(笑)。私たちのチームは皆コンテンツ愛がすごいと思います。
―コンテンツ愛を重視しているようですが、それには何か理由があるのですか?
千葉:好きじゃないと、ファンの期待に応えられないからです。『ガルパ』に限らずかもしれませんが、ファンの熱意がすごく高いゲームなので、デザインをする時もコンテンツ愛をもっているかどうかが大切なんです。
遠藤:こういうコンテンツが好きで、熱心な方はかなり深く考察などしていただけるので、それに応えられるクリエイティビティを持ちつつ、コンテンツを愛していないと作れないのかなとは思いますね。
ロゴひとつからユーザー体験は始まっている
―コンテンツ愛がわかるような例などはありますか?
千葉:たとえば、これから始まるイベントの告知ロゴひとつとっても、ユーザーさんはそのデザインを見て、その意味を色々推測されるんですよね。
―イベント告知ロゴひとつからしてユーザーさんの体験は始まっているんですね。
千葉:告知では1キャラクターしか出していなくても、そのロゴに入れたほかのキャラクターの要素とかで、この子とこの子のイベントかも、みたいな予想をしていただいたりとか。
井口:そのあたりのフィードバックはみんなTwitterでエゴサーチして得ています(笑)。
千葉:自分たちも好きで作っているので、ユーザーさんとほぼ同じ気持ちなんですよね。作りながらそのキャラクターの裏面などまで深読みして、今回のシナリオでは書いてなかった部分でもデザインで盛り込んでみたりもしちゃいます。もちろん必ずシナリオライターさんに確認しに行くのですが、そうすると、「そうそう! そういうことなんだよね」となったり(笑)。
遠藤:実際プレイする楽曲のジャケットも、「このキャラクターはこういう思いを実は抱えている」、「この歌詞はこういう意味だから」など、文脈に沿ってデザインをしています。
全員がシナリオを読み、デザインの文脈を知る
―先ほどシナリオと言う言葉がでましたが、デザイナーさんもシナリオを読むのでしょうか?
井口:むしろ読まないと作れないですね。
―制作現場によっては、プランナーのような方がシナリオの意図をまとめて、デザイン発注する、という形を取るところも多いと思いますが……。
井口:それで言うと、私たちは最初にクリエイティブを作るとなったら必ずシナリオを読み込むようにしています。そこから要素を抽出して、イベントのロゴやバナーなどを作っていきます。この先の展開で、「こういうことが起こるんじゃないかな?」のようなワクワク感がユーザーさんに伝わるようにするためには文脈を知っていないといけないので、必要不可欠な作業です。
遠藤:作ったものはシナリオライターさんにも見てもらって、きちんとイメージに合っているかどうかすり合わせてから出します。
コンテンツ愛がキャラクター性を守る
千葉:あとはコンテンツを好きでいることによって、一種のセーフティラインを引けているかなと思っていて、そのキャラクターなどが好きだからこそ、やっちゃいけないことが分かるんですよね。
―最低限絶対言っちゃいけないラインを皆知っているというのは、大事かもしれませんね。
千葉:はい。ユーザーさんに言われる前にこちら側で事前に気付けるのは大きいですね。たとえば、「今回はシリアスなお話だけど、この子は暗い子ではないから、ロゴのテンションは明るくしよう」などの判断がつきます。
―こういった細かいところを考えているからこそ、ユーザーさんに喜んでもらえるんですね。
デザイナー全員がフルコミットする提案型の組織
―先ほどからお伺いしていると、かなりフラットで提案可能なデザイン現場のように見受けられます。Craft Eggにおけるプランナーとデザイナーというのはそれぞれどういう立ち位置なのでしょうか?
遠藤:プランナーさんは運用の進行管理や新しい施策の情報設計など、いわばビジネス的なUX部分を考えてくださっています。一方で、デザイナーはグラフィックやUIなど実際にユーザーさんが触る部分のUXに責任を持っている感じです。
双方の観点からすり合わせしていって作っているのですが、たまにぶつかるときもありますね(笑)。
―たとえばどんな部分でぶつかるのでしょうか?
井口:プランナーさんが持ってきた文言が、UI的には文字が多すぎてごちゃごちゃしてしまう、などよくあるようなお話です(笑)。デザイナー的には「ユーザーさんに伝わりづらいから」スッキリさせて魅力的に見せようなどの提案をするのですが、プランナーさん的には「ユーザーさんが勘違いするといけないから」と議論になったり……。
―お互いユーザーさんが主語になってはいるものの、見ている範囲が違いますよね。
千葉:実際のところ絶対的な正解があるわけでもないし、この分野で成功体験がある人がチームにいるわけではないからこそ、皆でフラットに議論して進めていけるというのもあります。
5人全員でデザインしてレビューする
―チームについてお聞きしたいのですが、Craft Eggのデザイナーの人数とそれぞれの役割を教えてください。
遠藤:デザインチームではデザイナーが5人いまして、UIデザインや、イベント類のバナーやプロモーション関連のクリエイティブをつくったり、基本皆が全部をやっています。
―「基本皆が全部」というのは皆さんの間でスキルの住み分けはないのですか?
井口:あまりないですね。全員が全部できるような組織です。もちろん、細かい得意不得意はあると思うのですが、基本的には全部やらせてもらえますし、苦手意識があったとしても、チャレンジだと思ってやっていますね。
―デザイナー皆が主体的に動いているとなると、デザインの統一感や一貫性などはどう保っているのでしょうか? デザインガイドラインなどはあるのでしょうか?
千葉:資料化はされています。 ただ、あまり見ないですね(笑)。
遠藤:資料もあるんですけど、コンポーネントを引っ張ってくれば誰でも正しいルールで作れるように運用しています。
あと、私たちのチームの特徴としてクリエイティブを作ったときには「必ず全員のレビューを受ける」という文化があります。ですので、そこでデザインルールなどはお互い指摘しあって回収できます。成果物はできた先からChatWorkにぽんぽん投げていって、デザイナー全員でレビューしていきます。
―全員が必ず返答しなければならないのでしょうか?
千葉:はい。タスクがすごく詰まっている人はパスもOKですが、基本的には全員レビューするのが決まりです。
確認コストは普通のよくあるフローよりも少し高いのですが、逆に皆がデザインに関する全てを担当しているからちゃんとレビューできるということでもあって。皆で作る社風を大事にしています。
ビジュアルはコンテキスト重視、UIはシンプル
―『ガルパ』のデザインで意識していることはありますか?
千葉:UIのほうは、キャラクターを邪魔しない、程よくシンプルでイラストが引き立つようなものになるように意識しています。UIで世界観を作っているところもあると思うのですが、『ガルパ』の場合はそれよりも操作のしやすさなどを重視して、UIとコンテンツはしっかりと分けて考えています。
遠藤:逆にビジュアルに関しては、シナリオの内容が気になるようなデザイン、たとえばロゴを見た瞬間にストーリーをちょっと読んでみたいと思わせるようなものにすることを心がけています。
―ユーザーさんのコンテキスト(文脈)を加味しないと難しそうですね。
遠藤:そうですね。最近では初期に比べて、キャラクターが受け入れられて理解されているので、またデザインの仕方も変わってきています。この子は実はこういう裏設定がある、などの情報が周知されているので、敢えてそういった要素をジャケットデザインに入れ込むなど、ファンの皆さんの状況に応じて、喜んで頂けるように意識しています。
―本日はありがとうございました!
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Craft Eggのデザイナーの皆さんも登場する勉強会イベント「UX MILK Workstyle 12 feat. Craft Egg」が3月14日に開催されます。同社の取り組みについてもっと詳しい話が聞きたい方はぜひご応募の上、お越しください。
提供:株式会社Craft Egg
企画制作:UX MILK編集部
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