「見えないデザイン」から「見えないインターフェイス」への進化

Roxanne Abercrombie

Roxanne Abercrombie氏はライブチャットやビジネスプロセス自動化を専門とする英国に本拠を置くソフトウェアハウスであるParker Softwareのオンラインコンテンツマネージャです。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

The Evolution From Invisible Design Towards The Invisible Interface

あらゆるものがインターネットにつながる前の時代を覚えていますか?

たとえば、私は小学生の頃、あの頼もしいMicrosoft Encarta(マイクロソフトの百科事典ソフト)のCD-ROMに宿題を助けてもらいました。その様子を見た両親は、最近の子どもの生活があまりに便利なことに驚いて、「私が学生の頃は、わざわざ図書館まで行って本を借りなければならなかったのに…。」とよく呟いたものです。

ケーブルを通じてインターネットにアクセスをしていた15年前は、未開のWebを切り進み、目的のコンテンツを見つけるのにはそれなりの時間を要していました。私たちは、ほんの少し前のことでさえ簡単に忘れてしまうものです。

現在では、手のひらサイズのスマートフォンがあらゆる疑問の答えを知っています。タップして話しかければ、残りはすべてSiriがやってくれます。少し立ち止まって考えれば、ユーザーを満足させるために背後で多くの複雑な処理がおこなわれていることがわかるでしょう。しかし、本当に不思議なのは、私たちはそれらの処理について考える必要がまったくないことです。それらの処理は単に機能しているだけで、見ることはできません。しかし、実は見えないほうが好まれているのです。

考えさせない

Don't make me think(考えさせない)」というフレーズを同名の著書で最初に普及させたのはSteve Krug氏です。2000年に出版された同作は動きの速いUXの世界ではひと昔前の本ですが、このユーザビリティについてのKrug氏の著作は、現在でもデザイナーに参照され続けています。

Krug氏が「シンプル」を支持した最初の人物だというわけではありませんが、支持するのが早かったことは確かです。1970年代にDieter Rams氏は、現在では標準となった不朽の「優れたデザインの10原則」を定義しました。その中で彼は「優れたデザインは、できる限りデザインしないものである」と述べています。

数世紀前までさかのぼると、シンプルであることが最善であり、不必要に仮定を増やすべきでないと説く「オッカムの剃刀」という原理があります。そして、この考え方自体は「自然はできる限り直接的な方法で機能する」と述べたアリストテレスに由来するものです。

ここで重要なのは、シンプルであることを尊重し、日常生活をシンプルにしたいという欲求は、決して現代のデザイントレンドではないということです。人類ははるか昔から、物事をシンプルにすることに熱中してきました。そのため、技術や技術と接するためのインターフェイスが効率的なものから見えないものへと進化しつつあることも驚くべきことではないでしょう。

見えないデザインの勃興

この記事で「見えないデザイン」と言うときには、上品さの点で控えめなデザインのことを指します。このようなデザインは、デザイン自体に注目が集まることはありません。利用され、楽しまれるためのデザインであって、見られるためのものではないということです。見えないデザインによって、ユーザーは最小の労力と最大の効率で目標を達成できます。

インターネットユーザーとして、そして消費者として、私たちは直感的で見えないデザインに慣れ親しんでいます。その証拠は至るところにあります。最後にアプリを起動して動かすために取扱説明書を読んだのはいつだったか、自分に尋ねてみてください。あるいは、最後にサイトの扱い方がわからないWebサイトと遭遇したのはいつだったかを自問してみてください。

デジタルデザインは予測できるものになり、一貫性が生まれました。日常的に利用しているユーザーのために、デジタルデザインは、無駄が省かれ、標準化され、劇的に単純になったのです。私たちが気付かないうちに、見えないデザインは私たちの周りの至るところに近づいて、素早く滑らかに生活を単純化していきました。

見えない体験への移行

ただ、「見えないデザイン」という表現は、最近私たちが楽しんでいる没入型体験を正しく表していません。デザインについて考えるとき、私たちは未だに物体や物理的な要素を中心とした体験を考えてしまいがちです。しかし、ほとんど手で触れることができない空間で機能するデザインについてはどうでしょうか? 加えて、デジタル情報の構造や、形のないプロセスや行動を中心としたデザイン体験はどうでしょうか?

デザインは、もはや見て触れられるものだけに限定されません。現代のデザインとは、技術や情報、データという糸を、日常生活という縫い目に縫い合わせていくことです。目に見えないだけで、見えない体験はすでに実際に日常生活に現れています。

お母さんの誕生日に電話をするよう、Siriが思い出させてくれます。朝起きるとAlexaが電気ポットのスイッチを入れてくれます。立ち上がって足を伸ばす必要が生じると、腕時計が教えてくれます。これらの事例では行為について考えることがありません。なぜなら、考える必要がないからです。しかし、考えなくていいと安心したからといって、不注意になることはありません。これらの事例はすべて、見事にデザインされた「見えない体験」だからです。

誰でも平等に技術を利用できる

見えない体験を語るときには、声について言及することが不可欠です。声は新しいUXトレンドではありません。技術とインタラクションする方法にとって必然的な進化です。もともと声は直感的なインターフェイスであるので、声によって誰でも平等にデバイスを使えるようになります。

わたしたちが技術にアクセスする際には、必ず調整装置やマウス、タッチスクリーンなどの媒介を頼ります。技術が進化するにつれ、仲介するツールはよりフリクション(摩擦)を減らし、より早く簡単に作業を済ませられるように発展してきました。では、声よりも素早く簡単なツールはあるでしょうか?

わたしたちはタイピングを習得する前に話すことを覚えます。会話のほうが自然に感じるので、技術と会話することは、親しみやすく冷淡でない体験を生みます。私たちは、言葉を発しているものに人間性を見出します。そのため、デバイスに話しかけるとき、私たちは画素ベースのUIと単純に比べることのできない、自在な本能を利用しているのです。技術とその使い方という点では、声のUIは恐らくもっとも古く、同時にもっとも新しいインターフェイスでしょう。

新しいUIとしてのAI

現在もっとも若い世代は、見えないUIが標準となった世界で成長するでしょう。事実、その変化はすでに始まっています。Gartnerによると、2020年までにはWeb閲覧の30%が画面を使わずに行われるようになるでしょう。また、Salesforceの調査によれは、消費者の57%が2020年までに音声起動型のスマートアシスタントが日常生活に大規模もしくは中規模の影響を及ぼすだろうと考えています。

わたしたちはポケットの中のデジタルパーソナルアシスタントと雑談することに慣れてきていて、目新しかった存在が普通のことになりつつあります。Alexa、Cortana、Google Home、Siriといった社交的なアシスタントにはUIが必要ありません。利用障壁がなく、視覚的なデザイン要素もありません。間違えないでほしいのは、「デザインが存在しない」ことも1つのデザインの選択肢です。

ユーザーはせっかちで我慢ができません。さらに、贅沢に聞こえるかもしれませんが、タイピングは面倒な作業です。運転中や手がふさがっているとき、電話が手の届かないところにあるときには、タイピングをすることができません。反対に、話すことはほとんどいつでもどこでもできます。会話では毎分150語話せますが、タイピングでは40語しか打てません。

ユーザーにスピードとアクセシビリティを提供できるために、AIは新しいUIになりつつあります

フリクションのない未来

見えないデザインは素早く、さりげなく標準的になりました。現在では見えないインターフェイスは増えつつあります。しかし、音声UIであってもユーザーは手順に従う必要があり、フリクションが生じる可能性があります。たとえば、歯を磨きながら話せないですし、あるいはもし発話障害があるのならSiriとの会話は上手くいかないでしょう。

無駄なものや不要なものをなくすためにUXデザインが自然を真似ることはよくあります。しかし、声自体が欠点のある媒介手段であり、改善の余地があるとすれば、その次にはどのようなインターフェイスが生まれるでしょうか?

恐らくUIの次の段階は、不可視から真のフリクションレスに進化するでしょう。Mark Zuckerberg氏は今年、技術を思考で直接操作できる頭脳直結インターフェイスにFacebook社が取り組んでいることを発表しました。頭脳のUI化を目指しているのは彼だけではありません。Elon Musk氏は、ヒトとコンピューターをシームレスにつなぐブレインマシンインターフェイス(Brain-machine Interface:BMI)をすでに開発中です。

扱いにくいインターフェイスはユーザーの邪魔になります。デザインが洗練されるにつれ、かつては技術にアクセスするために活用されていた要素は次々と失われています。見えないデザインから見えないインターフェイスへの進化は単なる序章です。あらゆる媒介が締め出されています。

直感的なデザインは見えないデザインになり、見えないデザインはデバイスレスのデザインになり、デバイスレスのデザインは完全にシームレスなデザインへと進化してるのです。

UXに関して言えば「Don’t make me think(考えさせない)」だけではもはや不十分かもしれません。これからは「Don’t make me do(させない)」が必要になる可能性があります。


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