会社で1人目のデザイナーがデザイン文化を組織に広めるために行った4つの取組み

UX MILK編集部

モノづくりのヒントになるような記事をお届けします。

デザイナーが抱える大きな悩みのひとつに、「デザインを理解してくれる人がいない」というものがあります。最近では少しずつ変わっていますが、デザインの重要性を理解してくれる企業は全体としてはまだまだ少ないように思えます。

今回は、専任のデザイナーがいない企業に1人目のデザイナーとして入社したテモナ株式会社の大村さんに、「デザイン文化を組織に浸透させるために行った取り組み」を聞いてきました。

登場人物
テモナ株式会社 UI/UXデザイナー 大村 真琴氏

デザインを考慮する重要性

── 最初に、テモナさんの事業と大村さんの仕事内容を簡単に教えてください。

大村:テモナ株式会社は、「たまごリピート」と「たまごリピートNext」というサブスクリプションに特化したECの販売管理システムを提供しています。「たまごリピートNext」は、10年以上に渡って提供してきた「たまごリピート」をリニューアルしたサービスです。

私は、1人目のデザイナーとして入社し、現在はサービスのデザイン全般を担当しています。

── ありがとうございます。今回は、デザイン文化をどのように組織に浸透させるかというテーマです。まず、大村さんが入る前の状況を教えてください。

大村:入社した頃は専任のデザイナーがおらず、エンジニア20名弱のなかにデザイナーが私だけという状況でした。デザイナーが1人しかいない状況は初めてだったので、これは面白いなと思いました。

── 面白いなと思ったんですね。デザイナーが1人だと最初は苦労しましたか?

大村:そうですね。当時会社では「UIやUXが大事だけれど、どうしても優先順序が低くなってしまう」という状況だったので、まず「なぜデザインが大事なのか」をコアメンバーに理解してもらう必要がありました。

デザインするためのツールなどはもちろん揃っていたのですが、デザイン文化が浸透していなかったため、入社してすぐに「デザインをできる環境を整える」ことに取り組みました。この取り組みは、大きく分けると4つあります。

取り組み①:ローコンテクストなコミュニケーション

── デザイン文化を浸透させるための取り組みや工夫したポイントなどを聞いていきたいと思います。まずどのようなことをされたのですか?

大村:最初に行ったのは、エンジニアとのコミュニケーションです。デザイン文化を組織に浸透させることは大事ですが、新しく入ったデザイナーがいきなり「デザインはこうあるべき」と主張しても、メンバーから反発が起きてしまいます。

そのため、フランクな場を設けて会話するようにしました。当たり前かもしれないですが、まずは1人1人と仲良くして楽しく会話をすることで、チームとして受け入れてもらう。その上で、会話の中でデザインの話や自分が思い描いてることを伝えることが大事だと思います。

── やはりコミュニケーションが一番重要なのですね。コミュニケーション方法として気をつけた点はありますか?

大村:デザイナーとエンジニアではコミュニケーションの傾向にズレがあります。デザイナーは抽象的でハイコンテクストなコミュニケーションを取りがちなのですが、一方でエンジニアは業務内容的にもローコンテクストなコミュニケーションを取らざるを得ません。

そのためコミュニケーションでは、具体的なビジュアルで見せることを徹底しました。デザイナーではない人に、言葉でデザインを伝えてもイメージしにくいですし、認識の齟齬が生まれてしまうこともあるので、ビジュアルをベースにしたコミュニケーションは大事です。

ビジュアルで見せるのは時間がかかるかもしれないですが、デザインを見せたり図解したりしたほうがコミュニケーションがスムーズになりました。

── コミュニケーションにおいて、エンジニアからの反発はなかったですか?

大村:コミュニケーションの仕方に気をつけていたのはありますが、意見が通らないということはなかったです。テモナは話を聞いてくれる人たちばかりなので環境的にも良かったです(笑)。

取り組み②:先回りしてデザインを用意

── デザイナーがいない状況だったということですが、実際の開発プロセスにはどのように入り込んでいったのですか?

大村:開発の最初の段階で要件を決める会議があるのですが、入社した頃は仕様決めの段階ではデザインに関してあまり考慮されていませんでした。そのため、その会議に先回りして開発する機能を調査し、InVisionでラフスケッチを作り、印刷して会議で配るようにしました。

ラフスケッチがあることでエンジニアも事前に開発設計を考えることができるので、この取り組みはエンジニアからも好評でした。結果として、開発フローもスムーズになりました。

さらに、こういったことを率先して行うことで、デザイナーが仕様決定前の上流工程から自然と関わることができるようになったという効果もありました。

── デザイナーが先回りすることで、自然と上流工程に関われるというのは参考になります。

大村:基本的に先回りがポイントでしたね。開発プロセス全体がスムーズになるので、チームメンバーも受け入れやすかったと思います。

いまでは「次のスクラムではこういう機能があるからお願いします」と事前に言われるようになりました。

取り組み③:エンジニアとのデザインレビュー

── 開発プロセスにおいて、ほかに改善した点はありますか?

大村:入社当初はデザインレビューがされていなかったのを、エンジニアを巻き込んでデザインレビューをするようにした点ですね。これも「デザインレビューを今日から始めましょう」と言って始めたものではありません。

デザインを作ったら、エンジニアに「開発できますか」、「実装コストどれくらいですか」と逐一コミュニケーションをとるように心がけていました。そうすると、デザインに対してエンジニア側から意見が出てくるようになってきて、一緒にデザインをするという行為に自然と引き込むことができます。

細かくコミュニケーションを取ることによって、自然な流れでデザインレビューする状況を作りあげたというのがポイントだと思います。

── デザインレビューをする環境を自然に整えるのがスマートですね。

大村:エンジニアの中にデザイナー1人でどのように立ち回るかはすごく考えました。主張を押し付けて正面突破することは難しいので、向き合って一緒に考えていくいけるように整えていきました。

デザイナーのペアでデザインすることはよくあると思うのですが、当時はデザイナーが自分1人しかいなかったのでエンジニアとペアでデザインしていました。ですが、結果的に実装コストの削減にも繋がり、デザインレビューにもなるのでメリットしかなかったです。

取り組み④:社内イベントとしてドッグフーディング

── そのほか大村さんが入ってから変わった点はありますか?

大村:ドッグフーディングを行うようにした点ですね。「たまごリピートNext」はECサイトの支援を目的としたサービスであるため、ドッグフーディングをするとなると自社でECサイトを持つ必要がありました。ECサイトを持つことはコスト的に考えても現実的ではなく、ドッグフーディングの実施が難しかったです。

しかし、実際にサービスを使ってみないと課題が見えてこないので、今年2月に「バグコンテスト」という「たまごリピートNext」のバグをチーム対抗で見つけるコンテスト形式のイベントを開催しドッグフーディングを行いました。

── イベント形式のドッグフーディングは珍しいですね。イベント形式にした理由はあるのですか?

大村:あります。サービスに対してフラットな意見をもらうために、人事や経理などサービスとは直接関係がない部署にもドッグフーディングに参加してもらいたかったのですが、その部署の人からすると専門外の業務で単純に負荷が増えることになります。

そこで、全社イベントとして実施することにしました。イベントのポスターを社内のあちこちに貼って、景品を用意することでお祭り感を出し、社員が参加したくなるようなイベント設計にしました。

その結果、参加率は非常に高かったです。当時の社員数が55名だったのですが、バグコンテストの回答内容の重複も含めて645件ありました。計算すると社員1人あたり11.7件も意見を出してくれたことになります。

── BtoBサービスはドッグフーディングが難しいものも多いですが、このやり方は良さそうですね。イベントにおいて工夫した点はありますか?

大村:コンテストなのでルールも工夫しました。クリティカルバグが10点、仕様バグが2点、ただのバグが2点で、要望が1点というルールにしました。実は、この要望でも1点加点というのが肝なんです。

ひとつ目の理由は、バグ以外の「使いにくい」という意見も吸い上げたかったからです。ふたつ目の理由は、加点されるのがバグ報告だけだとエンジニアが多いチームが有利になってしまうのですが、要望でも点数が取れることで頑張れば頑張るだけ点数が入るような仕組みにしたかったからです。そのため、要望だけでも加点されるようにしました。

── 要望を集めつつ、エンジニアじゃない人が参加するモチベーションの向上にも繋がったということですね。よく考えられていますね。

大村:最終的にはエンジニアチームで報告されたものを判定し点数計算をして、チームごとの順位を発表しました。

まったく関係のないタスクを無理やりやってもらうのではなく、イベント感を訴求して参加率を上げることで良い体験にすることができたと思います。完璧なドッグフーディングではないのですが、コストなどの条件を考慮しつつ簡易的にはできたので非常に良かったです。

 

今後の課題はデザイン組織の立ち上げ

── 最後に今後のテモナについてお聞きしたいです。現在、デザイナーは大村さん1名ですが今後増えてくるのですか?

大村:来年、デザイナーが新しく2名ジョインする予定になっています。これからデザイン組織として急成長していく伸びしろのあるチームだと社内でも期待されています。

── デザイン組織の立ち上げフェーズに入れることは少ないので、そういったことに興味がある人には良さそうですね。どのような人に来て欲しいといったものはありますか?

大村:一緒に成長して、一緒に楽しく仕掛けていける思い切ったデザイナーが来ていただけたらなと思っています。あとはコミュニケーションを大切にされる人が来てくれたら嬉しいです。

デザイン文化も浸透してきており、風通しがよく意見が通りやすい環境なので、そういったところでドライブしてくれる人は活躍していただけると思っています。

── デザイン組織を拡大していく上での展望などを教えてください。

大村:テモナは、これからもさまざまなことに挑戦し続けます。その中でデザインチームは主軸のサービスである「たまごリピートNext」の画面設計やUX設計はもちろんのこと、サブスクリプションビジネス全体のプロモーションにも寄与していきたいです。

そのためには、社内外から信頼される「常に利用者に寄り添うデザイン」を創っていくことが大事なので、デザインチームの強化とデザイン文化のさらなる浸透を行っていきたいと思います。

── これからが楽しみですね。本日はありがとうございました。

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企画制作:UX MILK編集部


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